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探偵小説と推理小説2 [推理小説]

 「1973年版 推理小説年鑑 推理小説代表作選集」に、当時の日本推理作家協会理事長の島田一男さんが「序」を記載されていたことを前回書いた。その中での探偵小説と推理小説の違いが気になり広辞苑で調べてみた。探偵小説・・1969年発行第2版では「犯罪捜査の推理過程に興味の中心をおく小説。推理小説。」2008年発行第6版でも内容は同じ。一方、推理小説・・1969年発行第2版では「主に犯罪捜査を題材とし、その犯罪が、誰によって、いかなる動機・方法で行われたかを推理するところに興味の重点を置く小説。探偵小説。ミステリー。」2008年発行第6版では「犯罪事件、特に殺人事件の犯人、犯罪の方法・動機などにまつわる謎を論理的に推理・解明するところに興味の重点がある小説。ポーの「モルグ街の殺人」が早い例。探偵小説。ミステリー。」推理小説については第2版と第6版では表現がちょっと違う。探偵小説との違いについては、わかるようなわからないような。島田一男さんが書かれていたような、江戸川乱歩先生の探偵小説が推理小説の一分野と考えていい記述になっているのだろうか。

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探偵小説と推理小説 1 [推理小説]

「1973年版 推理小説年鑑 推理小説代表作選集」。1972年に発表された推理小説の中からピックアップされた14編が収録されている。当時の日本推理作家協会理事長の島田一男さんが「序」を担当されており、そちらが気になった。

「推理小説という言葉は故木々高太郎氏の作語である。戦後施行された当用漢字制には偵という字が含まれていなかったため、正式には探てい小説と書かねばならなかった。これではどうにも恰好が悪い。そこで木々氏の提唱により推理小説ということになった。しかし、どこか馴染めないし、抵抗を感じる言葉であった。現に、戦後の推理小説興隆の中心母体であった江戸川乱歩の会が組織化されたときも当用漢字を無視して、日本探偵作家クラブと名乗ったほどである。・・かつて乱歩先生は、―探偵小説は怪談からSFまでを含む―と云われたが、その言葉は推理小説にこそ当てはまるものであり、むしろオーソドックスな謎解き本位のいわゆる探偵小説は、推理小説の広い世界の一分野であるような感じを受けるようになった。・・」と記載されている。

 違和感なく探偵小説の表現を使っていたのだが、そのような過去まで知らなかった。ネットで当用漢字について調べてみると、1946年に当用漢字が制定された時には、「偵」の字ははいっていなかった。1954年に国語審議会から当用漢字補正試案が出され当用漢字に追加すべき28字に「偵」が入っていたものの、結局は変更されず、1981年の当用漢字制定でやっと「偵」が当用漢字に追加された。なにげに使用している漢字にもこの様な変遷があり、木々高太郎さんが当用漢字まで考慮して推理小説の表現に決められたとは、そこまでは考えていなかった。

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今邑彩 1  ワープロ [推理小説]

 鮎川哲也の作品から今邑彩につながった。鮎川哲也賞の前身である「鮎川哲也と13の謎」に1989年応募して「13番目の椅子」を受賞したのが今回話題にする「卍の殺人」だ。中公文庫版のあとがきには、一応デビュー作であること、手間暇かけて直すほどのマチガイではないのでそのままにしてあることなどが記載されている。時代背景は1988年ごろと考えるとのこと。

 筆者によっては初版から版を重ねるにつれて内容を変更したり、時間を経て再販するときに出版する時代背景と一致するように修正する場合もあるとのこと。本作品では文庫版においても、初版と同じとのことで安心した。

 基本、小説は書かれた時代を反映した文学だと思っている。筆者の考えや思いが入るため、執筆当時と一致はしなくてもいいはずだが、西村京太郎氏の小説のように、書かれた時代に使用された電話などの機器が推理に利用されるのは、読者としては読んでいてその時代に夢馳せることができ、読む楽しみが増える。

 今回の小説では、「・・隆広が使っていたのはS社の比較的新型のパーソナルワープロで、ディスプレイが液晶ではなく、十二インチのCRTタイプのもの。」との記載がある。S社のワープロとなるとシャープのワープロを思い出す。当時は東芝のルポとともに、ワープ業界では2大横綱だった。両社とも当時の面影がないのは、平家物語を思い起こさせる。

 シャープのワープロで12インチのCRTであればWD-652ではなかろうか。この機種は1988年度のグッドデザイン賞を受賞している。その後シャープは、自社の液晶技術を生かして表示への液晶導入を進めていく。一方の東芝は1983年にワープロJW-1Sでグッドデザイン賞を受賞し、その後もワープロでのグッドデザイン賞での常連会社だ。1988年当時は、まさか現在の両社の祇園精舎を想像だにしなかった。

小説への記載内容や時代から、いろいろなことにはせ参じることができる。これも小説を読む楽しみの一つではなかろうか。

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江戸川乱歩賞 1 [推理小説]

 09/23の日本経済新聞に「キャンパス新発見」として立教大学内にある江戸川乱歩邸を紹介している。立教大学のホームページには乱歩邸と共に邸内の画像や動画が紹介されている。1934年から亡くなる1965年までここで過ごしたとのこと。ここで小説の構想執筆されたのだろう。  さて江戸川乱歩賞は1954年乱歩氏の還暦を機会に設定されたもので、受賞前年に探偵小説界に顕著な業績を残した個人又は団体に贈られる建前とのこと。1955年の第一回は「探偵小説辞典」などに優れた業績のあった中島河太郎氏に贈られた。1956年第二回はハヤカワ・ポケット・ミステリー叢書の大量出版により探偵小説の新しい読者層を開拓した早川書房社長早川清氏に贈られた。1957年第三回からは書下し長編探偵小説を募集して第一席当選者に賞を贈り、講談社より単行本として出版するとなった。当初から公募による探偵小説の作家登竜門と思っていたのだが。この経過は江戸川乱歩賞全集②(講談社文庫)に詳しく記載されている。輝かしい公募受賞第一作は仁木悦子さんの「猫は知っている」で96編から選ばれ、当時まだ珍しかったテープレコーダーが犯人を解き明かすカギとなった。女史は日本のアガサ・クリスティーと評された。 1957年は近畿日本鉄道が日本最初の列車での公衆電話サービスを開始した年で、移動中でも電話連絡が出来る時代が到来した。その後当時の国鉄でも1958年に特急こだまに設置され、1964年の東海道新幹線への設置につながっていく。新幹線に公衆電話が設置されたときは、便利な連絡手段ができたと感心したが、サラリーマンにとって移動中の電車の中でも仕事に追われる残酷な時代到来とまでは考え付かなかった。さらに、自動車電話がタクシーにまで搭載されるのは1985年のさくらタクシー(大阪)まで待たねばならない。いずれも関西でいち早く提供が開始されたもので、新しいものへのチャレンジ精神旺盛な風土もあるのだろうか。
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テープレコーダー  仁木悦子 [推理小説]

 今回からは、山村女史にこだわらず、いろんな作家の作品を紹介していきたい。仁木悦子さんの「猫は知っていた」をご存じだろうか。1957年第3回江戸川乱歩賞を受賞した作品で、乱歩賞はこの年から書下し長編探偵小説を募集し5人の委員が選考にあたった。その第一回目の受賞作だ。応募作は96篇とのこと。この選考経過や作品は江戸川乱歩賞全集②(講談社文庫)に記載されている。この作品にはテープレコーダーが登場する。1957年当時ではかなり珍しかったと思うのだが。しかも、「・・再生する時回転数を増すと女の声に変わった。・・」と速度により音声が変化することでボイスチェンジャーとして利用して、犯人の声をくらましている。また、「・・まず、風呂屋の手前の公衆電話で箱崎医院を呼び出し手坂氏の声の第一回の電話をかけました・・」「・・それはレコーダーとしてはやや小型の30センチに20センチくらいのエビ茶色のケースだった。・・」との記載がある。 

  テープレコーダーを公衆電話で使うため、電源が近くにあるのか、それとも電池等で再生できるテープレコーダーなのかはたしてどちらなのだろう。例えばソニーの前身の東京通信工業が1954年に製品化しているTC302は19*32cmでほぼ小説の寸法に近いが電源が必要で電池では動かない。一方、1951年に商品化した「M-1」は、アンプ部分は電池使用だが、動力はゼンマイ式で電源がなくても再生は可能だったが、寸法としては一致しない。ただ、放送局用(NHK)に開発され電源を必要としないため街頭録音に効果を発揮した。はたして仁木さんはどのタイプを想定したのだろうか。事件のポイントとなるだけに興味深いが、もはや聞くことはできない。 

  放送局用に開発されたテープレコーダーは「デンスケ」との名称で同名の毎日新聞に連載されていた漫画が由来との記述もあるらしいが実際はどうだろう。ただ、昭和34年(1959年)に現在のソニー株式会社で商標登録され商標登録番号第543827号として現在でもテープレコーダーに関連する商品等で登録されている。それではと、「テープレコーダー」が商標登録されていないか調べたがさすがになかった。また、ソニーがテープレコーダーの発売当初、使用していたという「テープコーダー」の名称はと調べたがこれも残念ながら見つからなかった。


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