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今邑彩 1  ワープロ [推理小説]

 鮎川哲也の作品から今邑彩につながった。鮎川哲也賞の前身である「鮎川哲也と13の謎」に1989年応募して「13番目の椅子」を受賞したのが今回話題にする「卍の殺人」だ。中公文庫版のあとがきには、一応デビュー作であること、手間暇かけて直すほどのマチガイではないのでそのままにしてあることなどが記載されている。時代背景は1988年ごろと考えるとのこと。

 筆者によっては初版から版を重ねるにつれて内容を変更したり、時間を経て再販するときに出版する時代背景と一致するように修正する場合もあるとのこと。本作品では文庫版においても、初版と同じとのことで安心した。

 基本、小説は書かれた時代を反映した文学だと思っている。筆者の考えや思いが入るため、執筆当時と一致はしなくてもいいはずだが、西村京太郎氏の小説のように、書かれた時代に使用された電話などの機器が推理に利用されるのは、読者としては読んでいてその時代に夢馳せることができ、読む楽しみが増える。

 今回の小説では、「・・隆広が使っていたのはS社の比較的新型のパーソナルワープロで、ディスプレイが液晶ではなく、十二インチのCRTタイプのもの。」との記載がある。S社のワープロとなるとシャープのワープロを思い出す。当時は東芝のルポとともに、ワープ業界では2大横綱だった。両社とも当時の面影がないのは、平家物語を思い起こさせる。

 シャープのワープロで12インチのCRTであればWD-652ではなかろうか。この機種は1988年度のグッドデザイン賞を受賞している。その後シャープは、自社の液晶技術を生かして表示への液晶導入を進めていく。一方の東芝は1983年にワープロJW-1Sでグッドデザイン賞を受賞し、その後もワープロでのグッドデザイン賞での常連会社だ。1988年当時は、まさか現在の両社の祇園精舎を想像だにしなかった。

小説への記載内容や時代から、いろいろなことにはせ参じることができる。これも小説を読む楽しみの一つではなかろうか。

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